4月はいずみたく、中村八大の亡くなって30年のコンサートがあってちょっと落ち着かなかった。このところショー(というかステージ)の仕事をやってなかったのでその感じをすっかり忘れていて、ただピアノを弾くだけなのに、なにをどうしていいのかわからなくて、初心者のようになっていた。そうか、いまは別の世界にいるんだなあとつくづく思った。
同じ音楽をやっていてもその考え方、もちろん感じ方も人によってずいぶん違う。あたり前といえばあたり前だけど、音楽を仕事にしていれば、そういう世界ともつき合っていかなくてはならない。いや、いい歳になったからこれからは好きなことだけして、というのもあるかも知れないけれど、ずっとコマーシャル業界で仕事をしてきたのだ(いまはあまりしていないが)、そういう仕事の仕方しか知らない。
いまはピアノを弾くのが一番だ。テクニックはないけれど、どうしたら美しく聴こえるかだけを考えて弾いている。モーツァルトもベートーベンもバッハも弾けないけれど、それだけで音楽をやっていると感じる。心のどこかで誰かがそういうのだ。